中期経営計画

2026年度から4年間の新たな中期経営計画「Next Stage2030」がスタートしました。新中計は当社が更なる飛躍を目指すものです。当社がこれまで長年培ってきた、ガスエンジニアリング技術を成長の核に据えた中期経営計画の概要について、新中計を策定する前提となる事業に対する考え方を踏まえてご説明します。
産業ガスとは
酸素・窒素・アルゴンなどの産業ガスは、普段の暮らしの中では、あまり意識されにくい存在かもしれません。しかし実際には、鉄や自動車の生産にも、化学品や医薬品、半導体や電子部品、食品や飲料の製造にも、また病院などの医療現場にも、産業ガスは欠かせません。決して目立つ存在ではありませんが、見えないところで社会や産業を足元から支える素材であり、その特徴から”産業の血液”と称されます。
~産業ガスビジネスは、どう始まったのか~

いま、産業ガスはあらゆる分野の多様な場面で使用されています。その役割は、社会や産業の変化に伴って生まれてきた様々なニーズに応える中で広がってきました。創業以降、ものづくりの現場が高度化し、造船・鉄鋼・機械などの重工業が発展するなかで、「酸素」が大量に必要になりました。そこで、私たちは酸素をはじめとする産業ガスを自ら生産するために、空気分離装置(Air Separation Unit, “ASU”)を自社開発、自社製作するに至りました。
私たちの出発点はそこにあります。空気という、身近でありふれたものから、見えないガスの見えない機能を見えるようにする。その積み重ねが、私たちの歴史です。産業やお客さまの課題が変わるたびに、必要とされるガスの使われ方や、提供すべき機能と価値が変わります。その変化に向き合いながら、求められる役割を広げてきました。時代によって主役となる産業は変わっても、産業ガスそのものは、社会や産業の基礎を支える存在であり続けています。
見えないガスを、目に見える価値へ

私たちの強みは何なのでしょうか。それは、ガスをつくって届けることだけにとどまらない点にあります。私たちは、見えないガスの機能を、技術と工夫で目に見える価値に変えてきました。産業ガスは、それだけで価値が完結しません。それぞれが持つ性質や機能を、お客さまの現場で安全に、効率よく、生産性高く活かすためには、機器・装置、設備工事・エンジニアリング、そして運用のノウハウが必要です。
私たちの価値創造は、産業ガスと技術の融合・結合で成り立っています。その融合・結合によって、お客さまに新しい価値を届けています。つまり、私たちは「ガスを売る会社」ではなく、「ガスを起点に、お客さまの現場に価値を実装する会社」です。この強みがあるからこそ、私たちは事業を産業構造の変化とともに、有機的に広げていくことができます。とりわけ、半導体産業向けビジネスが事業拡張の起点となりました。
酸素・窒素のカテゴリーから、半導体製造の材料として使われる特殊材料ガスへ広がり、さらに半導体製造を支える機器・装置や設備工事・エンジニアリングと共に、サイトサービスのカテゴリーまで拡張してきました。産業ガスビジネスを深く理解し、お客さまと長く向き合ってきたからこそ、その先にある新しい事業の可能性が見えています。
~ガスの普遍性と拡張性~
そこで大切になるのが、「普遍性」と「拡張性」です。ガスは、どの時代にも産業を支えるために必要とされる普遍性を持っています。一方で、ガスの使われ方や機器・装置との組み合わせ方は、技術の進歩や社会の変化によって広がっていきます。つまり、変わらず必要とされるものだからこそ、新しい使われ方と価値が生まれ続けており、私たちは、そこに産業ガスビジネスの大きな可能性を見出しています。
~2つの接点~
また、私たちには、お客さまの現場と向き合う「2つの接点」があります。ひとつは、ガスを安定して届け続ける継続的な接点。もうひとつは、技術やサービスを通じて課題解決に入り込む直接的な接点です。この2つの接点があるからこそ、お客さまが本当に必要としていることを深く理解できます。
ただ製品を届けるだけではなく、課題を一緒に考え、価値を一緒につくるパートナーになれる。ガスの可能性を引き出し、それを安全に、効果的に扱う技術を積み重ねていくことが、新しい製品やサービスにつながっていきます。私たちの強さは、全国に張り巡らされた生産・供給インフラの規模だけではありません。産業ガスのインフラに加えて、技術、ノウハウ、現場力、お客さまとの信頼関係という、目に見えない資産を持っていること。そこに、私たちの競争力の源泉があります。
中期経営計画とこれからの産業ガスビジネス

私たちは、100年以上にわたり、空気から価値を生み出し、産業と社会を支えてきました。そしてこれからも、ガスの普遍性に、装置・技術・サービスの拡張性と現場力を掛け合わせることで、お客さま起点の新たな価値を生み出し続けていきます。私たちが見据えているのは、単なる事業の継続ではありません。次の100年の産業ガスビジネスを、自分たちの手でつくること。それが、新しい中期経営計画に込めた思いです。
私たちの中期経営計画は、これまでの歩みを継続するためのものではありません。これまで積み上げてきた強みを礎にしながら、それをさらに進化させ、次の成長、次の世代につなげていくための羅針盤です。中期経営計画の基本方針は3つあります。産業ガス事業を成長の礎として付加価値を高めて磨き上げる「基盤事業の進化」。エレクトロニクス分野やイノベーティブな分野の拡大を目指す「成長事業の創造と開拓」。最後が事業を支える会社の土台を強くする「経営基盤の革新」です。この3つを柱に、事業と組織の両面から、次代の成長をつくっていきます。
「基盤事業の進化」

まずは、基盤事業の進化です。産業ガスには、どの時代にも必要とされる普遍的な需要があります。一方で、日本の産業構造や市場環境は変わり続けています。国内の基幹産業の伸びが鈍化する局面もありますし、地政学リスクや環境問題、コスト上昇など、不確実性も増しています。
しかし、それらは私たちにとって後ろ向きな話ではありません。私たちは、成長する産業分野でますます事業を広げることができますし、ただ販売数量を増やすのではなく、新たな提供価値を創造することで、付加価値の高い事業へ進化していくこともできます。産業ガスと技術を組み合わせることで、お客さまの生産性、安全性、品質、安定操業にどう貢献できるか。 その視点で基盤事業を磨き込むことが、次の成長の礎になります。
「成長事業の創造と開拓」

次に、成長事業の創造と開拓です。日本酸素は、既存事業の延長線上に、新しい事業を生み出せる会社です。これまで培ってきた技術を広げ、新しくイノベーティブな事業を育てていく。販売数量に頼らない、新しい価値を持つ製品やサービスをつくっていく。そこに、これからの成長余地があります。
その中で中期経営計画が特に注力するのが、エレクトロニクス、ガスエンジニアリング、イノベーション、カーボンニュートラルの分野です。
エレクトロニクス分野では、半導体産業を支える特殊材料ガスを始め、先端半導体技術の進化に対応する半導体材料や機器・装置・設備工事・エンジニアリング・運用サービスまで提供価値を広げていきます。前の中期経営計画でも、この分野には高成長の兆しが出ています。半導体需要の拡大や技術進化を、当社グループの成長機会として引き続き捉えていきます。
ガスエンジニアリング分野では、産業ガスとエンジニアリングをさらに融合させ、顧客課題のソリューションビジネスの進化を進めていきます。また、空気分離装置(ASU)製作におけるコア技術のブラッシュアップや生産工場のリモートオペレーション、製造工場のオートメーションなど生産性の向上にも注力していきます。
イノベーション分野では、安定同位体、AM(Additive Manufacturing、積層造形)、MOCVD、(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、有機金属化学気相成長法)、バイオといった事業分野において、既存事業の拡大とともに技術の高度化による高付加価値事業の創出を進めています。
カーボンニュートラル分野では、2050年のカーボンニュートラル実現を産業ガスサプライヤーとして支えることを見据え、新たな事業の探求を進めています。産業ガスは、エネルギー転換や脱炭素社会の実現に向けても、大きな役割を果たせる。つまり、この分野は社会課題への対応であると同時に、将来の成長領域でもあります。
これらはすぐに大きな事業になるものばかりではありません。しかし、こうした技術の芽を育てることが、次の時代の日本酸素をつくっていきます。産業ガスビジネスを深く理解し、お客さまと向き合い続けてきたからこそ、次の事業の芽が見えるのです。
「経営基盤の革新」

そして3つ目が、経営基盤の革新です。 経営基盤の革新とは、単なる効率化ではありません。人がより高い付加価値を生み出せるように、会社の土台そのものをつくり変えていくことです。そこには、DX・AI・デジタル活用による生産性向上の推進はもちろんのこと、多様性を力に変える組織づくり、誠実で透明性の高い企業文化、そして社会や環境への責任を果たし続ける姿勢も含まれています。
私たちは、産業ガスには、たくさんの可能性があると信じています。お客さまとの2つの接点を活かし、お客様のパートナーとして技術力とエンジニアリング力を磨き上げることで、産業の発展や社会課題の解決に役立つ、新しい製品やサービスを生み出していきます。
原点を未来の起点に
「原点を未来の起点に」。これは、昔を懐かしむ言葉ではありません。ガスの普遍性に、装置・技術・サービスの拡張性と現場力を掛け合わせ、自分たちの手で次の100年の産業ガスビジネスをつくっていく。その意思を表す言葉です。産業ガスビジネスは、イメージしづらいビジネスの形態かもしれません。しかし、その可能性は決して小さくありません。むしろ、社会や産業が複雑になるほど、その価値は広がります。私たちは、その可能性を信じ、産業ガスと技術の融合・結合によって、未来の価値を創り続けます。